第3章:人間に最も重要な3大栄養素

第2章「栄養が人間の体に与える役割」で説明した際に、人間の体に必要とされる栄養素を紹介してきました。

その中でも、最も重要となっている「炭水化物」「脂質」「たんぱく質」を、3大栄養素と呼んでいます。

更に「ミネラルビタミン」を含めた5大栄養素もありますが、上記の3大栄養素を説明していきます。

炭水化物

炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分けられます。

糖質

炭水化物は「炭素・水素・酸素」によって構成されています。
エネルギー源となる糖質と、消化されない食物繊維に分けられます。

糖質は、エネルギーとして最も重要な栄養素であり、人間が1日に摂取する総エネルギーの50~60%を占めています。

また、糖質は体内に1gあたり4kcalのエネルギーを生み出します。
たんぱく質や脂質と比べても、消化吸収がはやいので、エネルギー源としても即効性があります。
糖質は脳を活性化させるための唯一のエネルギー源です。

ただし、摂取後にすぐに利用されない糖質は、肝臓などでグリコーゲンや脂肪として蓄えられてしまうため、糖質の過剰摂取は肥満を招いてしまうこともあります。

食物繊維

食物繊維は、人間の消化酵素では消化することのできない難消化性成分です。
穀類・野菜類・豆類などの、植物細胞壁に多く含まれていますが、動物性食品にも含まれています。

エネルギー源や体の構成成分にはなりませんが、次のような働きが注目されています。

食物繊維の働き

①腸の有害物質を排泄して、腸内環境を整える
②水溶性の食物繊維は、ブドウ糖の吸収を遅らせたり、コレステロールの排出を促進する効果があり「糖尿病・高血圧を予防」する
③水に溶けない不溶性の食物繊維は、便通をよくして便秘を防ぎ、大腸がんの予防にも効果がある
④口の中で噛む回数が増えるため、あごの強化虫歯の予防につながり、食べすぎを防止する

脂質

脂質はエネルギー源となるほかに、細胞膜やホルモンなどの材料にもなります。
炭水化物と同様に「炭素・水素・酸素」からなる物質です。

食品に含まれる脂質のほとんどは「中性脂肪」であり、エネルギー源となって1gあたり9kcalを生み出しています。
脂質を構成する脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類されます。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は「肉類」「乳製品」の脂肪に含まれており、構造としては鎖状に繋がれた炭素のすべてに水素が結合しています。
飽和脂肪酸を含む脂肪は融点が高いので、常温だと固形なものが多い。

中性脂肪やコレステロールなどの血液中の脂肪濃度を上昇させてしまい、過食が進むと脂質異常症動脈硬化などの症状がでることもあります。

不飽和脂肪酸

基本的に不飽和脂肪酸は「植物油」「魚介類」に多く含まれており、炭素同士が二重結合している部分が存在する構造となっています。

その二重結合の個数が1つのものを「一価不飽和脂肪酸」2つ以上のものを「多価不飽和脂肪酸」と呼びます。

脂質・不飽和と不安になる言葉が多く「健康に良くないのでは」と考えがちですが、寧ろ体に良いものばかりです。
一価不飽和脂肪酸は「善玉」と呼ばれており、総コレステロールを下げて動脈硬化の予防を行います。有名なものは(オリーブオイル

多価不飽和脂肪酸の方も体内では合成されず、必要な栄養素にあたる必須脂肪酸が類しています。
その種類は「リノール酸」「α-リノレン酸」「アラキドン酸の3種類で、どれも別々の働きをするのでバランスの良い摂り方が必要です。

コレステロール

コレステロールは誘導脂質の1つであり、細胞膜や胆汁酸、性ホルモンの材料になるなど、生命の維持には欠かせない物質となっています。

その20~30%は食物から摂取しますが、残りの約70%は体内(肝臓)で合成されています。
肝臓から送り出されるコレステロール(LDL)が、肝臓へ戻るコレステロール(HDL)より多くなってしまうと、動脈硬化の原因となってしまいます。

血中のコレステロールの基準値は「130~219mg/dℓ」とされており、値が低すぎてもいけません。
コレステロールが低すぎる場合には、血管が脆くなって脳出血を起こしやすくなります。

トランス脂肪酸

食品の食感や風味、保存性を向上させるため、植物油に水素を添加する過程で発生するのが、トランス脂肪酸です。
このトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングに多く含まれています。

トランス脂肪酸を大量摂取した場合、心臓病のリスクを高めてしまいます。
世界保健機関(WHO)では、1日あたりの摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満にするように勧告しています。

たんぱく質

たんぱく質は、アミノ酸が多数結合したものであり「炭素・水素・酸素」のほかに、窒素を平均として約16%含んでいます。
人間に必要なたんぱく質は約10万種類とされていますが、これらは約20種類のアミノ酸の組み合わせによって作られています。

約20種類のアミノ酸のうち、9種類は人間の体内では合成することができず、食物から摂取しなければいけません。
これを必須アミノ酸と呼びます。

また、たんぱく質は動物性たんぱく質(肉類、魚類卵、牛乳、乳製品など)と植物性たんぱく質(豆類、大豆加工品など)に大別されます。

栄養価の比較をアミノ酸価で行った場合に、植物性たんぱく質は動物性たんぱく質よりも低い傾向にありますが、米・魚など食品を組み合わせることでアミノ酸価を大きく改善します。
これを、たんぱく質の補足効果と言います。

たんぱく質は、筋肉、内臓、皮膚、つめ、歯、毛髪、血液、ホルモンなどの材料になるとともに、ビタミン・ミネラルと同じく体の調子を整える働きもします。

また、1gあたり4kcalのエネルギーを生み出しますが、エネルギー源としては糖質や脂質の摂取量が不足し、エネルギー源が不足した時に使われます。

たんぱく質が不足した場合に、鉄と結合して作られる血液中のヘモグロビンが減少していきます。
このため、血液で全身に運ばれる鉄の量が減少し、鉄欠乏性貧血の原因になります。
また、成長期の子供は十分に成長できなくなることもあるので、注意が必要です。

確認問題

第3章で学んだことを確認してみましょう。